夫婦が離婚を考える理由はそれぞれです。人は価値観も、生活環境も異なるので、当然と言えば当然ですよね。
今回は○○な理由でも離婚が出来るのか、弁護士の見解を聞いてみましょう。
マヨネーズに執着する夫と離婚したい
夫:まこと(34)
妻:まゆみ(35)
夫のまこととは、婚活パーティで出会い、意気投合し結婚しました。お互い歴史好きで、結婚後も一緒に旅行に行ったりして、とても楽しいです。
でも、同じ生活するうえで、どうしても許せないことがあります。それは、何にでもマヨネーズをかけること。いや、人の食の好みにいちいち、注文つけちゃだめだとは思いますし、我慢しようとは思っていました。
でも、かける量が半端ないんです。おかずやご飯が見えなくなるまでかけるんです。1日1本消費してるんじゃないかってくらい、尋常じゃない量をかけるんです。
ご飯やパンにはもちろん、和食洋食関係なく、おかずにもかけます。イチゴやリンゴなどの果物や、アイスやケーキといったデザートにも「ちょい足し」とか言って、かけてきます。
もはや味覚異常レベルです。しかも、外出する時も、マイボトルならぬ、「マイマヨネーズ」を持参し、外食してもこっそりマヨネーズをかけてます。
正直、せっかく作った料理に大量のマヨネーズをかけられるのは気分が悪いですし、きついです。
「健康のために、マヨネーズを控えてほしい」と言っても、「マヨネーズは完全食だから問題ない」とか言って聞く耳を持ってくれません。意味が解りませんし、正直スイーツや果物にすらかけるなんて信じられないです。
最近は、マヨネーズを見るだけで吐き気がしそうです。夫自体はキライではありませんが、この先ずっとマヨネーズもセットでついてくるのかと思うと、げんなりします。
てか、結婚前は普通にマヨネーズをかけずに、食事してたので正直どうすればいいかわかりません。夫がマヨネーズへの執着を止めてくれない場合には離婚したいと思うのですが、こんなくだらない理由で離婚できるのでしょうか。
見解
夫婦の離婚は、双方の合意があれば成立します。一方的に離婚を請求するためには、相手方の行為によって、夫婦関係が破綻した原因が無ければなりません。
今回のまゆみさんのケースでは、夫婦間の食の好みが焦点となっています。食の好みは、個人の趣味嗜好ですので、その自由は公共の福祉に反しない限り、尊重されるという主旨の内容が憲法で、以下のように定められています。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
簡単に言えば、他人の人権を侵害しない限り、個人の趣味嗜好は最大限の尊重がなされるべきだと言うことです。
つまり夫であるまことさんの、「あらゆる食事にマヨネーズをかける行動」が夫婦関係の破綻の原因に当たる可能性は低いと思います。
したがって、離婚を成立させるためには協議、もしくは調停で双方の合意を得ることが必要になるでしょう。ただし、これはあくまで離婚することが前提のお話です。
まゆみさんは、まず夫のまことさんとコミュニケーションを取り、話し合いを行った方が良いと思います。食の好みの変化や過剰摂取は、ストレスによって引き起こされるケースもあり、味覚障害や依存症であるケースもあります。
夫婦で冷静に話し合えれば、まことさんが過剰摂取した原因を突き止めることで、離婚を回避することが出来るかもしれません。話し合いの際は、まず相手方の主張を否定しないように聞き、双方が感情的にならないようにすることがベターです。

アイドルにハマりすぎてる夫と離婚したい
夫:かつや(42)
妻:さきこ(33)
娘:なな(4)
夫がオタクでした。アイドルオタクです。めっちゃショックです。何がショックって、ガチ勢だったんです…。
私は、そもそもアイドルが嫌いなわけじゃありません。若い女の子が頑張ってる姿を見ると、応援したくなる気持ちはわかります。
ただ、ガチ勢は理解が出来ません。握手会やらなんやらで高額なお金をつぎ込んだり、アイドルに恋人がいるのが発覚すると叩いたりと、本当に恋愛している感はちょっとやばいと思ってしまいます。
まさか夫が、そういう感じでアイドルを応援していたとは夢にも思いませんでした。
発覚したのは、物置を娘の部屋にしようと掃除をしていた時です。段ボールがいくつも重なっていたのですが、その中には同じCDが何十枚も出てくる出てくる。握手券だけが切り取られていました。グッズも凄く買っていました。
また少し前まで使っていたスマホを確認すると、「うちの嫁に○○ちゃんのお面をかぶせて過ごさせたい」とか「○○ちゃん、かわいいよー。結婚したい。何で嫁と結婚しちゃったのか謎…」Twitterとブログにはそんな内容が延々と書かれていました。
めちゃくちゃ仲が良い夫婦とは思っていませんでしたが、それなりにうまくやっていたと思っていたのでかなりショックです。その他にも直接的な性的な内容とかも書いてあって、正直本当気持ち悪いです。
てか、オタクであることを全然知らなかったので、余計気持ち悪く思えてしまいました。とりあえず、見なかったふりをして普段通り過ごしていますが、嫌悪感が先立ってしまって、離婚も考えています。
ただ、子供の今後もありますので、出来ることなら慰謝料を取って離婚したいですが、可能でしょうか。
見解
アイドルが好きというのは、個人の趣味嗜好なので、それ自体が有責行為になる可能性は低いでしょう。したがって、今回のさきこさんの場合、夫のかつやさんと離婚を成立させるのであれば、協議、もしくは調停で行うべきだと思います。
また、離婚と言えば慰謝料と考えがちですが、離婚で慰謝料を請求するには、次の条件を満たす必要があります。
- 夫の行為が民法770条で定められている有責行為に該当するかどうか。
- 夫の有責行為によって精神的苦痛を受けたかどうか。
1.夫の行為が民法770条で定められている有責行為に該当するかどうか。
民法770条では、不貞行為・悪意の遺棄・3年以上生死不明・配偶者が強度の精神疾患で回復が見込めない場合・その他婚姻を継続し難い重大な事由を裁判上で離婚を請求できる理由として位置付けています。
これらの理由を有責行為や法定離婚事由と呼びます。離婚したい理由が上記の事由に当てはまらない場合、裁判で離婚の可否を争うことはできません。
2.夫の有責行為によって精神的苦痛を受けたかどうか。
離婚で慰謝料を請求できるのは、相手方の有責行為によって、精神的苦痛を受けたかどうかが焦点になります。また、有責行為で傷ついたとしても、それを証明する証拠等がないと、慰謝料を請求できなかったり、減額されたりします。
かつやさんの行為が、上記ふたつの項目に当てはまるどうかは、現状では難しいと言わざるを得ません。ただし、CDを大量購入した時期に生活費をくれなかったとか、CDを購入するために多額の借金をしたという事実があれば、慰謝料を請求できるケースもあります。
慰謝料の使い道がお子さんの養育に必要とのことですが、慰謝料は不法行為に対する精神的苦痛を賠償するものです。お子さんの養育に必要なお金は、慰謝料ではなく、養育費という名目で請求できます。養育費の支払いは、親の義務であり、また子供にも受け取る権利があります。本来であれば、必ず取り決めておくべき大切なお金なのです。
裁判所のホームページでは、養育費算定表と言って、子供の人数や年代、夫婦の年収によって毎月どれくらいの支払いが妥当なのか、確認できる表も公表されています。
慰謝料は必ずもらえるものではないので、請求が難しい場合には養育費の取り決めを検討してみてください。

自分勝手な夫と離婚したい
夫:なりや(35)
妻:さいこ(24)
息子:けいし(2)
幼いころから男らしい男性が憧れでした。私自身、母子家庭で育ち、周囲に男性がいないこともありました。だから、リーダーシップを持った、ちょっと強引な男性な夫に惹かれ結婚しました。
しかし、結婚後ほどなく妊娠してから環境ががらりと変わりました。私は吐きづわりで、妊娠後しばらくは、食べ物のにおいをかぐと吐いたり、食欲が減退して、体調が悪くなっていました。夫は、そんな私の様子をみて、「甘え」と言い切り、通常の家事を強要してきました。
完璧に家事ができないと、「なんでお前はそんなことも出来ないんだ」「家にいるんだから、家事やって当然だろ」と出来ないことにたいして詰ってきました。夫は、怒り始めるとなかなか手が付けられなくなり、私が謝り続けてようやく矛を収めてくれるような感じでした。
その当時も辛いと思いましたが、お金の面もあるし、怒らなければそこまでひどい人ではないと思い我慢していました。
けいしが産まれて、初めての育児にあたふたしていても、全然助けてくれません。それどころか、やはり家事がちゃんとされていないことに、怒るのです。
はじめのうちは、言葉だけでしたが、機嫌が悪いとクッションやまくらを投げてくるようになりました。けいしが夜泣きをすると「睡眠を妨害された」と、小突かれたりしました。
いろいろ我慢してきましたが、これ以上我慢すると心がおかしくなってしまいそうです。離婚したいのですが、離婚できるのでしょうか。
見解
夫婦には、扶助協力の義務というものがあります。夫婦生活を送るうえで、夫婦は互いに協力し合い、助け合わなければならないということです。
今回のさいこさんのケースでは、夫のなりやさんからモラルハラスメント等のDVを受けている可能性が高いです。モラルハラスメントとは、精神的DVのことで、言葉や行動によって、相手の心を支配しようとする行為です。
また、現在小突かれたり、モノを投げられたりもされておりますので、身体的なDVも受けていると思われます。
DVは有責行為に該当し、一方的に離婚できる理由にもなり得ます。まずは、ご自身の身の安全を確保するために、別居することをおすすめします。
家族や親族に頼れる状況でないのなら、配偶者暴力支援センターに相談してみることをおすすめします。状況によって、DVシェルターなど、一時的な避難場所を紹介してもらえることがあります。
また、有責行為を証明するものとして、DV行為をつづった日付入りのメモや日記、DVによってついた怪我の診断書、精神疾患を患ったとされる診断書などが有効になります。
また、警察の生活安全課に相談し、接見禁止等の措置を講じることも可能です。DVはご自身やお子さんの命に危険が及ぶことがあります。我慢しないで、周囲の方への相談、もしくは公的機関を利用し、対応措置を考えていくことが大切です。
まとめ
今回は3人の女性の相談を紹介しました。離婚に至る理由は人それぞれです。ただし、離婚理由が相手方の有責行為に該当しない場合、一方的に離婚することはできず、夫婦の話合いで解決することになります。
夫婦の話合いには、協議と調停とふた通りあります。夫婦同士の話し合いで、決着がつかない、もしくはもめそうなときには裁判所に調停の申し立てをしてみても良いかもしれません。また、弁護士に相談することも手段のうちなので、検討してみてください。
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