【弁護士監修!】妻が離婚するといって家を出ていった!思ってもみなかった婚姻費用のトラブル

夫婦双方に有責行為がない場合、離婚するためにはお互い離婚することに同意しなければなりません。

つまり、どちらかが離婚を拒否し続けるとなかなか離婚することができません。

そんなとき、有効な手段とされているのが別居です。

しかし別居する場合、収入の多い方は低い方に婚姻費用を支払う必要があります。

今回は、妻から離婚をするといって別居され、婚姻費用を請求されている男性の相談事例を紹介していきたいと思います。

 

勝手に別居した妻から婚姻費用の請求!婚姻費用の支払いを拒否したい

相談者:弘樹(仮名)31歳

妻:明美(仮名)27歳

 

妻の明美とは、ロックフェスで出会いました。

当時、僕は24歳で、明美は20歳でした。

明美は、初めてのロックフェスの参戦が楽しみだったようで、精一杯おしゃれをしてきたようでした。

フェス向きではない高いヒールを履いてきてしまい、靴擦れでしゃがみこんだところ僕が話しかけことで付き合いに発展しました。

好奇心旺盛で交友関係が広い彼女が交友関係の狭い僕と付き合っていることは周囲に驚かれましたが、性格が真反対だったことがよかったのだと思います。

5年ほど付き合い、結婚しました。

結婚生活は、お世辞にも順調とはいえませんでした。

結婚してはじめの2,3か月は良かったものの、明美はまだ25歳。

好奇心の強い彼女らしく、落ち着いた関係よりも刺激を求める性質だったようで、家のことはすべて僕が担い、彼女はライブにいったり、クラブに行ったり、旅行に行ったりと遊びまわっていました。

まあ、20代の中盤は、僕もたくさん旅行やフェスに行っており、明美の気持ちも理解できたので、羽目を外しすぎないよう伝えるだけで、家事を分担してほしいとか、朝帰りを辞めてほしいとは強くいいませんでした。

好きなバンドのライブやフェスには興味があるけれど疲れるし、仕事が忙しいのも相まって休日はできるだけ家にいたいこともあったので、まあしばらくしたら落ち着くだろと思うくらいでした。

その時にきちんと明美と向き合っていればその後彼女が家を出ていくことはなかったのかもしれません。

1年も経てば明美も落ち着くだろうと安易に考えていたのですが、まったく落ち着きませんでした。

夫婦間で会話はありますし、しゃべれば楽しいですが、ずっと家事を僕がやっていることに不満を覚えました。

ゴミ出しや洗濯くらいは手伝ってほしいと伝えましたが、「時間がないから無理」といわれます。

僕だって仕事しているんだから時間をやりくりして家事をしていることを伝えると不貞腐れ、機嫌が悪くなります。

いつもならそこで諦める僕なのですが、ここで許したら延々僕が100パーセント家事負担になると思い、渋る明美を説得し、ゴミ出しと風呂掃除、食器洗いを担当してもらうことになりました。

一度了承したのだから少しはやるだろと高をくくっていた僕は、彼女の生活力のなさに愕然としました。

まずゴミが分別できない。

燃えるゴミに平気でペットボトルを入れて出そうとする。

ペットボトルは資源ごみだと伝えたところ、結局火で燃えるんだからいいじゃんと悪びれなし。

風呂洗いは、浴槽を洗剤で洗わずに溜まった水を流して、新しいお湯に入れかえるだけ。

皿洗いは蛇口を出しっぱなしにして洗う、などなど…。

僕自身は結婚前一人暮らしをしていたし、実家でもそれなりにやっていたのである程度家事をすることができます。

26歳になって、満足にゴミ出しもできないとかまじか…。

結婚した当初に一緒に家事をすればよかったと後悔しました。

が、いつまでも落ち込んでもいられないので。一緒に家事をしてやり方を教えることにしました。

すると予想外なほど彼女は不機嫌になりました。

「仕方ないから弘樹のいうとおりにやってやってるのに、いちいち口出してきて本当にうざい!」、「私に指図しないでよ!」などなど。

カチンときましたが、明美と同じように感情的になったところで何も解決しません。

そのためできるだけ私情が入らないよう、夫婦である以上一緒に住むんだし、最低限家事をすることは努力してほしいと伝えました。

家事の分担をめぐって争いになってからというもの、明美と僕の関係は次第に悪化していきました。

僕自身は極力喧嘩を避けたいのですが、顔を合わせるたびに仏頂面になったり、いちいち突っかかってきたりと本当に疲れます。

お互いにフラストレーションを溜め、イライラするようになり、くだらない喧嘩が増えました。

明美が出ていったのは、家事をお願いするようになって半年ほど、結婚して1年半くらいのことです。

いつものように突っかかれたときに僕が「めんどくさ」といったことがきっかけです。

「面倒くさいなら出てく!」とあっという間に荷物をまとめて出ていきました。

一瞬引き留めようかとも思いましたが、度重なる言い争いに幼稚な言い訳、そんなものにうんざりしていた僕は追いかけませんでした。

明美が出て行って2週間後、婚姻費用を支払えという連絡が来ました。

月々8万円支払うことと勝手に決められました。

恥ずかしながら婚姻費用についてよくわかっていなかったのでネットで調べたところ、夫婦が別居したときに収入が高い方から低い方に支払う生活費のようでした。

僕は年収が600万くらいで、明美は350万ほどです。

算定表というものをみると、大体相場は2万から4万程度、少し多めにみても4万から6万くらいだと思います。

そもそも家事をほぼ放棄して勝手に怒って別居した妻に婚姻費用を支払うべきなのでしょうか。できれば拒否したいです。

不倫して別居すると婚姻費用がもらえないって本当?婚姻費用について解説

弁護士の見解

今回の相談者である弘樹さんは、別居している妻の明美さんが請求してきた婚姻費用が高すぎるのではないか、またそもそも勝手に出ていった明美さんに婚姻費用を支払う必要があるのかというお悩みを抱えています。

 

婚姻費用とは弘樹さんがおっしゃる通り、夫婦が別居した際に収入高い方が低い方に支払う生活費のことを指します。

生活費とは、衣食住の費用の他に、子どもがいる場合にはその子の教育に必要な費用や交際費なども含まれます

夫婦には双方生活保持義務といって、配偶者に自分と同等程度の生活を保持する義務があります。

そのため配偶者の了承を得ず、勝手に別居した場合でも支払う必要があるとされています。

今回の弘樹さんの場合も、婚姻費用の支払い義務が生じる可能性があります。

とはいえ、お話を聞く限り明美さんは、夫婦の義務である同居義務に反するような行動をしているので、明美さんが勝手に出ていったことを立証することができれば支払わなくてもすむかもしれません。

また、明美さんの別居先が実家や一人暮らしなどではなく男性と暮らすために別居した場合には、法律上の離婚事由のひとつである不貞行為にあたるため婚姻費用を支払わなくて良い可能性が高いです。

次に婚姻費用の支払い額についてです。

婚姻費用の支払い額は法律で明確に決まっているわけではありません。

そのため、月々の支払い額は夫婦の話し合いによって決まります。

とはいえ月額どれくらいの額か夫婦だけで決めるのは指標がないと難しいでしょう。

そこで弘樹さんも確認された裁判所が公表されている婚姻費用算定表というものを参考に婚姻費用を決めるケースが多いです。

婚姻費用算定表は、夫婦それぞれの収入、子どもの人数や年齢層などから月々の婚姻費用の支払い額の相場を確認することができます。

弘樹さんの年収は給与所得で600万、明美さんの年収は給与所得で350万円とのことですので、お調べいただいたとおり2万円から4万円程度の支払い額が相場になります。

そのため、明美さんが請求した月々8万円の婚姻費用は相場よりやや高い金額です。

婚姻費用は請求したもの勝ちではなく、夫婦の合意のもとで金額が決定するので弘樹さんは明美さんと話し合いできるのであれば、当事者同士で話し合って決めた方が良いです。

婚姻費用の支払い義務は、当事者が金額を取り決めた時点、または婚姻費用請求調停を申立てしたときから生じることになります。

つまり相手の請求を拒否したり、相場よりも低い金額を提示したりして、話し合いを引き延ばし、相手に調停の申立てを待つことで、支払う婚姻費用を抑えられる可能性があります。

とはいえ交渉の仕方や状況によって異なるので自力で行うのではなく弁護士に相談した方が良いと思います。

弘樹さんが離婚を望むのか、婚姻を継続し別居を解消するのかはわかりませんが、別居状態が長引くと婚姻費用の支払い額が大きくなります。

仮に話し合いが面倒だからといって、明美さんの婚姻費用請求をそのまま受け入れると、離婚するか別居を解消するまでずっと月々8万円の婚姻費用を支払い続けなければなりません。

また調停調書など債務名義となる文書で取り決めた場合、婚姻費用の支払いを滞納し続けると最悪の場合給料差し押さえなど強制執行されてしまう可能性もありますので、婚姻費用の支払い額は慎重に決めましょう。

まとめ

今回は勝手に出ていった妻へ婚姻費用を支払わなければならないかについて事例を交え解説していきました。

婚姻費用は支払いが長期的になると非常に重たい負担になります。

すぐに離婚や別居解消などのめどがつけば良いのですが、長期間にわたると「もう婚姻費用を支払うのが苦しいから相手の条件で離婚しよう」と諦めてしまう方もいらっしゃいます。

そうならないためにも、婚姻費用の支払い額はきちんと納得がいくまでは合意しないようにしてください。

自力ではどうにもならないときには、弁護士に相談することをお勧めします。

婚姻費用だけではなく離婚に至ったときについてもアドバイスをもらえるので検討してみてください。

 

弁護士に相談したい方はこちら

 

 

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