夫婦が離婚する場合、必ず行うべきこととして、財産分与があります。
簡単にいえば、結婚期間中に築いた財産を夫婦で話し合って分けることをいうのですが、財産が預貯金だけでなくさまざまな資産が含まれるため、トラブルになる可能性の高いものです。
今回はその中でも特にトラブルになりがちな、「親からの贈与」が財産分与の対象になるのかについて解説していきたいと思います。
財産分与の基本知識!夫婦の共有財産とは?どんな財産が対象なの?
財産分与というと、夫婦で財産を分けるというイメージを持つ方がいらっしゃると思いますが、具体的にどのような財産が対象で、どんな割合で分けるのか知っている方は少ないかもしれません。
早速、確認していきたいと思います。
<H3>財産分与の対象は結婚してから離婚するまでの夫婦の共有財産
財産分与の対象となる財産は、結婚してから離婚、または別居するまでの期間に夫婦が協力して築いた預貯金などの資産や借金などの債務をいいます。
法律用語では財産分与の対象となる財産のことを、夫婦の共有財産と呼んでいます。
財産というと、預貯金などの金銭をイメージする方もいらっしゃると思いますが、夫婦の共有財産は主に次のようなものもあります。
- 戸建てやマンションなどの不動産
- 株式や国債などの有価証券
- 自動車やバイクなどの動産
- 冷蔵庫やテレビなどの家電製品
- テーブルや棚などの家具
- 宝石類や貴金属
- 生命保険の解約返戻金
- 退職金
- 住宅ローンや借金などの債務
夫婦の共有財産がプラスの財産のみの場合には、それを夫婦で分けることになります。
なお、住宅ローンや自動車ローンなどのマイナスの財産がある場合には、離婚後返済をどちらが行うかなどを決めて分け合うかたちになります。
また、結婚しているあいだに築いた財産であれば、どちらの名義なのかは関係なく夫婦の共有財産となり、財産分与の対象になります。
財産分与は基本的に財産を半分ずつ分け合うことになる
財産分与でトラブルになりがちなものとして、夫婦の共有財産をどのような割合で分けるのかという点です。
財産分与は、夫婦の資産形成に貢献した度合いによって割合が異なります。
貢献した度合いは、「収入」だけが指標になるのではなく、家事や育児を行ったことも指標のひとつになるので、基本的には半分ずつの割合になることが多いです。
ただし、必ずしもきっちり半分に分け合うのではなく、夫婦の話し合いでお互いが合意すれば、夫が4割、妻が6割といったような分け方もできます。
【弁護士監修】離婚したら財産分与の取り分は?住宅ローンの支払いはどうなるの?親からの贈与は特有財産!財産分与の対象ではない
基本的に夫婦でいる間に取得した財産はすべて夫婦の共有財産になるので財産分与の対象になります。
ただし例外もあり、親などからの贈与によって取得した財産や、相続などで取得した財産は共有財産には含まれません。
というのも贈与や相続によって取得した財産は、夫婦が協力して築いた財産ではなく、個人で取得した財産とみなされるからです。
このように個人的に取得した財産のことを特有財産といいます。
なお、特有財産には親などからの贈与や相続の他に、結婚前の預貯金といったようなものも含まれます。
親からの贈与なのに財産分与の対象になるケースはあるのか?
親からの贈与は、結婚中であっても個人的に取得した特有財産になるので、基本的には財産分与の対象外です。
ただし、贈与された状況や管理の仕方によっては財産分与の対象となってしまうこともあります。
まず、結婚後に親から贈与されるときとは具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
以下をご確認ください。
- 生活費・教育費の援助をしてもら
- 住宅を購入するときの頭金などを贈与してもらう
- 生前対策などで財産を贈与してもらう
このように親から贈与を受けた場合、共有財産の対象となってしまうのでしょうか。
それぞれ考えていきたいと思います。
生活費・教育費の援助をしてもらう
親から贈与を受けるケースとして、結婚後の生活が2人の収入では苦しかったり、子どもの教育費が必要だったりというようなことが挙げられます。
まず、生活費の援助を理由として、親から贈与してもらう場合には、共有財産とみなされる可能性が高いです。
というのも生活費の援助としてのお金は特有財産なのか共有財産なのかはっきりしないときが多いからです。
特有財産なのか共有財産なのか明確にわからないお金は共有財産としてカウントされることを覚えておきましょう。
次に子どもの教育費について考えていきましょう。
子どものための教育資金として親からあなたに対して贈与した場合には、夫婦の共有財産として考えられます。
一方で、教育資金をあなたの親が、あなたの子どもに贈与した場合には、あなたの親が孫に贈与したということになり、そのお金はあなたや配偶者の財産ではなく子どもの特有財産になるので財産分与の対象になりません。
住宅を購入するときの頭金などを贈与してもらう
親から贈与を受けるケースとして、戸建てやマンションといった自宅を購入するときの頭金などを援助してもらうことが挙げられます。
住宅を購入するときに受けた親からの贈与は財産分与の対象外になるため、その金額を差し引いて財産分与を行うことになります。
ただし、こちらもどれくらい援助してもらったのかがはっきりわからないと共有財産としてカウントされることになります。
例えば、住宅購入時の頭金を援助してもらった場合を考えてみましょう。
頭金を援助してもらった場合には、「頭金として○○円贈与してもらった」ということが分かれば財産分与の対象外となります。
一方で頭金として援助してもらったことが明確にわかるものがなかったり、月々の住宅ローンを少しずつ援助してもらうような場合には、贈与であることがはっきりしないため、共有財産としてみなされるケースもあります。
生前対策などで財産を贈与してもらう
親から贈与を受けるケースとして、親が相続税など生前対策の一環として行うことが考えられます。
親から贈与される財産が不動産や株式などの有価証券の場合には、共有財産の対象外になることがほとんどです。
というのも、不動産の贈与を受けた場合、親からあなたに不動産名義の変更を変更した際に、贈与によって取得したことが不動産の登記名簿に載せられますし、贈与契約書を作成したり、その価額によっては贈与税を支払ったりすることになります。
これならば親からあなたに贈与したことがわかるため、財産分与の対象にはならないと思われます。
また、有価証券に関しても贈与を行う際、上場株式の場合には証券会社などに親が連絡して、贈与契約書を作成し、また金額によっては贈与税を支払うことにもなります。
こちらも親があなたへ贈与したことが分かるため財産分与の対象にはならないでしょう。
一方で、預貯金などの金銭の贈与の場合には注意が必要です。
親が生活費とは別のあなた名義の口座に振り込んでもらい、贈与したことがわかる契約書や贈与税を支払った証明書などがあれば財産分与の対象外です。
しかし、生活費を管理している口座にそのまま振り込まれ、親から贈与されたお金であることを証明するものが何もない場合には共有財産としてみなされてしまうこともあるので注意が必要です。
【共有財産はお金だけじゃない】離婚時にもめる可能性のある財産分与まとめ
今回は親から贈与された財産が財産分与の対象になるのかについて解説していきました。
親からの贈与は、夫婦ではなく個人で取得した財産なので、基本的には財産分与の対象外です。
しかし、贈与された財産の管理が共有財産と一緒にしてしまうと共有財産としてみなされてしまうこともあります。
また、あなたが「財産分与の対象外」と伝えても、配偶者が納得してくれずトラブルになってしまう可能性もあります。
そのような場合、自力で解決しようとすると対応を誤ってしまい、結果せっかく親から贈与された財産をすべて共有財産としてみなされる
可能性があります。
そのためトラブルになりそうだというときには弁護士への相談を検討してみてください。
コメントを残す