【親権は母親が取るとは限らない】男性が親権取得しやすくするための対応方法を知ろう!

日本では子どものいる夫婦が離婚する場合、共同で親権を持つことはできず、どちらか一方の親が親権を持つことになります。このことを単独親権制といいます。基本的に男性が親権を取得するのは難しいといわれており、実際に離婚した夫婦の8割以上が母親を親権者としているというデータもあります。

今回は男性が親権を取得する難しさや取得しやすくするための対応について確認していきたいと思います。

【段階別】夫婦内で親権を取り決める方法

親権を取り決めるにあたって、大きく3つに分けることができます。それぞれどのような方法があるのか、確認していきましょう。

方法①:夫婦の話し合いで取り決める(離婚協議)

親権を取り決める方法として、まずは夫婦の話し合いが挙げられます。この話し合いのことを離婚協議と呼びます。離婚協議は、夫婦双方の合意のもとさまざまな取り決めがされます。親権以外にも養育費や財産分与、夫婦の一方が有責配偶者であるときには、慰謝料についても話し合われます。

結論からいうと、離婚協議で妻が夫の親権取得に合意してくれれば、離婚届の「夫が親権を行う子」の欄に子どもの名前を記入すれば、親権を取得することができます。妻の同意さえ得られれば、基本的に親権を取得できるので、一番時間がかからない方法ともいえるかもしれません。とはいえ、一番高いハードルが「同意を得ること」なので、夫婦間の話し合いでまったく折り合いがつかない場合には、調停に進むことになります。
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方法②:裁判所の仲介の調停を行う(離婚調停)

離婚協議で親権について折り合いがつかない場合には調停に進みます。調停とは、裁判所の仲介のもと夫婦で話し合いを行い、双方の妥協できるポイントを見出し、話し合いで解決を目指す方法です。

調停は、基本的に調停を申し立てられた側の住んでいる地域を管轄する家庭裁判所で行われます。自ら申立てを行わなくても、相手方が申立てることで調停になる場合もあります。なお、「調停の申立てをした方が有利」なんてことはないので、ご安心ください。

調停で親権の取り決めを行う場合、以下の点が重要視され話し合いが行われます。

  1. 子どもの今までの養育状況について
  2. 子どもに対する愛情
  3. 子どもの年齢について
  4. 子どもの意思
  5. 離婚後の子どもを養育するための環境を整えられるか
  6. 身体的、精神的に健康であるかどうか
  7. 経済的に余裕があるかどうか

親権者の決定は、子どもの利益が最大限に考慮されます。したがって、いくら男性側が親権を取得したくとも、これまで育児への参加が無かったり、子どもの年齢が低かったり、子どもの意思に反していたり等があると、父親が親権を取得できる確率は下がります。

なお、上記の7項目を判断するには、調停の場だけでは判断できないこともあります。このような場合、家庭裁判所調査官(以下、家裁調査官)という役目のひとが、子どもや親と面談したり、学校等に聞き取り調査を行ったりして、実情を確認します。

家裁調査官の調査報告書は、調停においてかなり重要な資料となります。そのため、親権取得に関して有利に進めるためには、調停に関する準備とは別途で、家裁調査官の対策も行うべきです。

家裁調査官は、「どちらの親といた方が子どもは幸せになれるのか」の観点で行います。したがって、今までの養育実績を証明できる保育園等での連絡帳のやりとり、育児記録等を用意した方が良いでしょう。また、調査前に両親等に育児への協力の約束を取り付けておき、離婚後の育児環境を整えた方が良いでしょう。
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方法③裁判で親権者を決める

調停で親権に関して折り合いがつかない場合には裁判で親権者を決めることになります。裁判では、裁判官は原告と被告が提出した証拠書類や、家裁調査官の報告書、証言等を元に、原告と被告どちらの言い分に説得性があるのかを判断し、判決をくだします。

親権争いでの裁判は、双方が主張を譲らず長期化する可能性があります。
【裁判離婚は時間がかかる】離婚訴訟になった場合の3つの終結の仕方 上記のように、親権を取得する方法として3つの方法が考えられます。なお、調停等に進んだ場合の男性の親権取得率はかなり低いです。裁判所が公表している司法統計によると、父親が親権を取得した割合はわずか9パーセントと1割にも届いていないのが現状です。

男性が親権を取得しにくい理由とは?

男性が親権を望み、調停や訴訟に発展した場合、親権を取得できる確率は現実的に言うと非常に低いです。具体的な原因として以下が考えられます。

  • 育児に関わる参加率
  • 離婚後の養育環境が整っていない
  • 母性優先の原則がある

具体的な問題点についてそれぞれ確認していきましょう。

育児に関わる参加率

男性が親権を取得できない問題点のひとつとして、育児に関わる参加率の低さが挙げられます。少し前のデータになりますが、総務省が公表している6歳未満の子どもがいる夫婦の週における家事関連の時間は男女でかなり違います。どれくらいの違いがあるのかは以下の表をご確認ください。

■6歳未満の子どもを持つ夫・妻の家事関連の時間(平日週)

家事関連時間(総計) 1時間23分 7時間34分
家事 17分 3時間7分
介護等 1分 6分
育児 49分 3時間45分
買い物 16分 36分

平成 28 年社会生活基本調査 生活時間に関する結果より抜粋。

上記をご確認いただければお分かりのとおり、週における家事関連時間の平均の男女差は約5倍あります。

親権取得を考えた場合、離婚前の育児の参加率はとても重要な要素のひとつです。いくら親権を取得したくても、「育児はほとんど妻が担っている」という状態では難しいです。そのため、親権を取得するには、まず育児に関わる時間を増やすことが大切になるでしょう。

離婚後の養育環境が整っていない

男性が親権を取得しにくい理由として、離婚後の養育環境が整っていないことが挙げられます。親権を取得するためには離婚後子どもが心身ともに健康的に暮らせる環境を整備することはとても重要です。例えば、子どもの育児をするために時短勤務や在宅勤務にしたり、実家や親族等に育児への協力を得られる環境にしたりすることが挙げられます。

収入が高い等経済的余裕があることも親権取得を考えるうえで考慮される事項ですが、それよりも育児にかかる時間を確保できること、子どもが安心して生活できる環境が整っていることの方が重視される傾向にあります。

したがって、仕事優先の生活から子ども優先の生活に切り替えられるかどうかが重要となります。

母性優先の原則がある

男性が親権を取得しにくい理由として、母性優先の原則が挙げられます。母性優先の原則とは、父親よりも母親と暮らした方が子の利益につながるという考えです。一般的に子どもの年齢が低いほど母親が必要だと考えられ、この原則を重視する傾向にあるので、男性の親権取得の大きなハードルとなりえます。

とはいえ、母性優先の原則はどんなケースでも絶対的に優先されるものではありません。男性側が別の観点からみて妥当とみなされれば、親権を取得できるケースもあります。

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男性が親権を取得しやすくするために対応すべきこととは?

男性が親権の取得を目指すにあたって対応すべきこととして、以下が考えられます。

  • 育児の実績を積み、記録に残す
  • 離婚後の生活が子ども中心にできるよう調整を行う

育児の実績を積み、記録に残す

親権を取得しやすくするための対応として、まずは子どもとの時間をつくり、育児の実績を積むことです。妻に任せっぱなしでは、親権の取得は難しいです。仕事の兼ね合いもあるのでなかなか難しいかもしれませんが、離婚して親権を取得した場合には、生活は子ども中心となります。

保育園や学校等の行事に積極的に参加したり、平日子どもといられる時間を増やしたり、休日は優先的に子どもと過ごすことを意識してください。また、育児実績を示すものとして、育児した日にちや時間を入れた日記等で記録しておくと良いかもしれません。日記は、調停等になった場合に育児実績を裏付ける証拠書類になる可能性があります。

離婚後の生活が子ども中心にできるよう調整を行う

親権を取得しやすくするための対応として、離婚後の生活を見据え、子ども中心の生活ができるよう、仕事の調整や環境づくりをしておくと良いでしょう。

育児の協力については、周囲に協力を得られる親族がいる場合にはあらかじめ根回ししておきましょう。周囲に信頼できるひとがいない場合には、役所等に相談し、保育園やベビーシッター、ファミリーサポート等の活用を検討しましょう。

職場については上司や人事担当と相談し、子ども中心の生活になること、残業が難しくなる可能性があること等を伝えて理解を得るよう努めましょう。どうしても理解が得られない場合には、転職も視野に入れて考えることも大切です。

まとめ

今回は男性が親権を取得する難しさや、取得しやすくするための対応について確認していきました。男性の親権取得は、入念な準備のうえ進めないと、なかなか取得できないのが現実です。

夫婦同士の話し合いである離婚協議で親権が決まればいいですが、なかなかうまくいかず、調停や裁判等に発展する可能性は十分にあり得ます。調停や裁判等に発展した場合、自力での対応はかなりハードルが高いので、早い段階で弁護士に依頼することを検討しましょう。

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